慶事と仏事の料理
日本料理は季節など日本の豊かな自然を取り入れる一方で、
昔ながらの伝統を重んじている。
とくに慶事と仏事で供される料理やその表現方法は、有食故実や神人共食の
思想などを受け継いで、食べ物に異議づけをしている。
本来仏事では精進料理が基本であるが、現在では動物食品も加える。
色
日本では黒は不吉、赤は吉祥の表現としてめでたいとする他、慶事には金銀
紅白の組み合わせを用いて華やかにし、仏事は黒、白、青、黄、銀、黒白、
青白が用いられる。例えば、地域差はあるが、かまぼこは慶事は紅白、
仏事は青白となることが多い。
野菜
とくにその種類での差はないが、慶事に飾り切りしてそれがめでたい
料理であることを表す。
例)亀甲椎茸、矢羽根蓮根、梅人参
魚
慶事に用いる魚は形、色、名前などによって供される。反対に仏事には
これらは用いられず白身魚を刺身にして供されることが多い。
本来、仏事でのタンパク質源は豆製品が多く、ゆば、豆腐、麩、油揚げが
多く使われる。
尾頭つきの魚 | 人の頭になるようにとの願望と、庶民は魚を丸ごとはたべられなかったので贅沢を表す意味で。 |
鯛 | 色が赤であること。めでたいの「たい」との語呂合わせと姿形が美しく、味もよいことから江戸時代以降、祝い魚の第一である。 |
伊勢海老 | 海老は「海の老人」を意味することから長寿を託する。殻が鎧のようであり、色も赤く、姿もよい。 |
出世魚 | 成長するにしたがい、名前が変わる魚。ワカシ、ワカナゴ、イナダ、ワラサ、ブリ(関東)ツバス、ワカナ、ハマチ、メジロ、ブリ(関西)ハク、オボコ、イナッコ、イナ、ボラ、トド、コッパ、セイゴフッコ、スズキ |
鯉 | 逆流にさかのぼる勢いのある魚とされている。室町時代までは鯉が第一の魚であった。 |
鮑 | のし鮑は長くのびることから、永続し、発展する意味でめでたいとされ、吉事の印として贈り物につけられる。 |
料理名
慶事の場合に限らず、食事をもてなす際にはより細かいが大切である。
仏事である以外は料理名についても、季節感、食材の形状、そしてめでたい
言葉をもりこむことが望ましい。反対に仏事には「重ねる」という言葉の
ように避けるべき言葉もあるので注意を要する。
器
料理名と同様に、慶事にはめでたい意匠や華やかなものを選び、
仏事には、梵字の模様などが適する。
